胆道系疾患の病態と複合糖質との関連性:免疫組織化学とコラ-ゲンゲル内培養を用いて

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670135
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 中沼 安二 金沢大学, 医学部, 教授 (10115256)
• 研究分担者: 寺田 忠史 金沢大学, 医学部, 助教授 (30188677)
• キーワード: 肝内・胆管 / 糖鎖 / 粘液 / コラ-ゲン・ゲル

研究概要

1.ヒトの正常肝(成人、新生児、胎児)を用い、末端糖鎖を特異的に認識するレクチン(UEAー1,Con A、PNA等)、血液型物質(A,B,H,ルイス抗原など)や癌関連性糖鎖抗原(CEA、CA19ー9など)に対するモノクロ-ナル抗体を用い、免疫組織化学的に検索し、胆道系での各種複合糖質のマッピングを作成した。成人正常肝の肝内胆管系では、ルイス抗原は肝内胆管系に広く分布しているが、ABH型物質は大型胆管にのみ分布し、小型胆管では見られなかった。UEAー1やCon Aも同様な分布を示すことを見いだした。
2.種々の胆道系疾患で、これらの複合糖質のマッピングや糖鎖構造は種々の程度に変化する事を見い出した。つまり、閉塞性黄胆や肝内結右症などのいくつかの胆道系疾患では、正常肝に較べ、UEAー1,ECA,SWGAの染色パタ-ンに変化が生じ、PNAが染色される様になることを見い出し、先天的な胆道疾患である多嚢胞肝や胆管奇形腫では、小葉間胆管と同じレクチン結合性を示す事を見いだした。おそらく疾患の発生と進展に関連していると考えられる。
3.私どもの開発したコラ-ゲン・ゲル内培養法では、胆道上皮細胞は増殖し嚢胞を形成し、その腔内に大量の粘液糖蛋白を分泌することが明かとなった。また、ヒトの胆嚢より単離した上皮細胞も同様に嚢胞を形成することに見い出した。この家兎とヒトの培養系を用い、免疫組織化学的に、胆道系上皮からの粘液糖蛋白の分泌機序を詳細に検索し、特にレクチン結合能に関して、類似の所見が得られた。さらに粘液分泌を促進する物質(プロスタグランジンE2)や分泌を抑える物質(モネンシン)を培地内に入れ、上皮からの粘液の分泌機序の変化を検討した結果これらの物質に反応することが明らかとなった。この系は、ヒトの胆嚢・胆管系の機能の解明に有用と考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Katsuhiko Saito,Yasuni Nakanuma: "Lectin biding of intrahepatic bile ducts and peribiliay glands in normal livers and hepatolithiasis" Tohoku J Exp Med. 160. 81-92 (1990)
• [文献書誌] Tadashi Terada,Yasuni Nakanuma,Akira Kakita: "Pathologic observations of intrahepatic peribiliary glands in 1,000 consecutive autopsy livers: Heterotopic pancreas in the liver" Gastroenterology. 98. 1333-1337 (1990)
• [文献書誌] Motoko Sasaki,Yasuni Nakanuma,Tadashi Terada,Masahiro Hoso 他: "Amyloid deposition in intrahepatic large bile ducts and peribiliary glands in systemic amyloidosis." Hepatology. 12. 743-746 (1990)
• [文献書誌] Tadashi Terada,Yasuni Nakanuma: "Pathological observations of intrahepatic peribiliary glands in 1.000 consecutive autopsy livers.II.A possible source of cholangioーcarcinoma" Hepatology. 12. 92-97 (1990)
• [文献書誌] Hiroshi Kurumaya,Tadashi Terada,Yasuni Nakanuma: "‘Metaplastic lesions'in intrahepatic bile ducts in hepatolithiasis: A histochemical and immuno histo chemical study" J Gastroenterol Hepatol. 5. 530-536 (1990)
• [文献書誌] Tadashi Terada,Yasuni Nakanuma: "Pathological observations of intrahepatic peribiliary glands in 1.000 consecutive autopsy livers.III,Survey of necroinflammation and cystic dila tation." Hepatology. 12. 1229-1233 (1990)
• [文献書誌] 河村 泰仁、中沼 安二: "細胞レベルからみた消化器の機能 5ペ-ジ(分担)" 日本医館, 5 (1990)