ヒト胃腺腫および胃癌における癌遺伝子と抑制遺伝子に関する細胞生物学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670137
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 井藤 久雄 広島大学, 医学部, 助教授 (60127610)
• キーワード: 胃腺腫 / 胃癌 / 癌遺伝子 / 抑制遺伝子 / 細胞生物学

研究概要

1)胃腺腫、胃癌におけるRAS、MYC、FOS、ERBB2、EGFR遺伝子の免疫組織化学的検討は終了した。胃癌におけるERBB2遺伝子の発現に関しては論文投稿中であるが、胎児、新生児胃粘膜では発現が強いこと、胃癌では印環細胞癌を除けば、組織型は関係なく高率に発現していることが明らかとなった。
胃腺腫における癌遺伝子産物については論文準備中である。
2)パラフィン包理ブロックよりのDNA抽出は2/3程度の症例で可能であった。slot blot法による検討では胃腺腫ではMYC、FOS、ERBB2遺伝子の増幅を認めなかった。Polymerase chain reaction(PCR)法を用いPAS遺伝子の点突然変異についてみたところ、胃腺腫24例中1例でのみ点突然変異が見い出された。
3)TGFβ免疫活性は癌細胞のみ陽性であったがsialidase処理(2時間)にて正常粘膜上皮にも陽性となった。これは不活性型TGFβが活性型になった為と見做された。
4)p53免疫活性は胃癌の約50%で陽性癌細胞の出現を認めた。この結果はWestern blot法による検討とよく一致していた。地方、パラフィン包理切片を用いた検討では胃腺腫10例いずれにも陽性細胞を見い出さなかった。
5)胃癌の新鮮凍結材料よりDNAを抽出し、RFLPマ-カ-を用いた遺伝子欠失の検出を開始した。用いるプロ-ブは8個の染色体上の14種である。

研究成果

• [文献書誌] Ito H,et al: "Depressed tubular adenoma of the stomach:Pathological and Immunohistochemical Properties" Histopathology. 17. 419-426 (1990)
• [文献書誌] Ito H,et al.: "Gastric carcinoma with lymphoid stroma:pathological and immunohistochemical analysis" Hiroshima J.Med.Sci. 39. 29-37 (1990)
• [文献書誌] Yasui W,et al.: "Effect of epidermal growth factor on rat stomach carcinogenesis induced by NーMethylーN'ーnitroーNーnitrosoguanidine" Acta Pathol.Jpn.40. 165-171 (1990)
• [文献書誌] Tsujino T,et al.: "Alterations of oncogenes in metastatic tumours of human gastric carcinomas" Br.J.Cancer. 62. 226-230 (1990)
• [文献書誌] Takekura N,et al.: "pp60^<cーsrc> protein kinase activity in human gastric carcinomas" Int.J.Cancer. 45. 847-851 (1990)
• [文献書誌] Yoshida K,et al.: "Growth factors in progression of human esophageal and gastric carcinomas" Exp.Pathol.40. 291-300 (1990)