研究概要 |
1.細胞成長因子受容体の免疫組織化学的染色方法の検討: 上皮成長因子受容体(EGFR)の免疫染色には従来凍結切片の使用が不可欠であり、検索上多くの制約があった。今回、多種抗原の保持に優れパラフィン包埋が可能なAMeX法(Satoら、1986)の有用性について検討した。ヒトの胎盤絨毛ならびにヌ-ドマウス皮下に作成したAー431細胞の腫瘍組織(以下Aー431T)の凍結切片、AMeX法によるパラフィン切片、パラフォルム固定パラフィン切片に対して市販の抗EGFR抗体(EGFR1,EGFRーTRI)を用いてABC法による免疫染色を施行し、その結果を比較検討した。凍結切片およびAMeX切片では絨毛栄養細胞あるいはAー431T細胞の細胞膜に沿った明かな陽性所見が得られた。染色強度は両者の間に差はなかったが、切片作成の容易さ、細胞形態の保持、染色部位の明暸さなどの点でAMeX法が優れていた。パラフォルム固定パラフィン切片では陽性所見は殆どみられなかった。以上の結果よりAMeX法がEGFRの免疫染色にも有用であることが示された。 2.ヒト末梢気道上皮の再生における増殖因子・受容体の発現の検討: 雄ヌ-ドマウスの皮下にヒトの肺組織を移植した後、1,2,3,4,6週で採取した移植肺組織からAMeX法およびパラフォルム固定のパラフィン切片を作成し、市販の抗EGF、抗TGFα、抗EGFR、抗cーerbBー2抗体を用いて免疫染色を施行した。従来の我々の報告(Kitamuraら、1990)のとおり移植肺組織は生着し、上皮は再生ならびに分化を示した。各増殖因子あるいは受容体の陽性所見はいずれの時点においても認められなかった。今後の詳細な検討を要するが、成人ヒト末梢気道上皮細胞の再生過程においてはEGFやcーerbBー2は主要な役割を果していない可能性が示唆された。なお宿主マウス由来のEGFの作用によるdownーregulationの可能性も否定できないのでこの面からの検討も必要である。
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