C細胞機能の発現とその調節について、甲状腺組織内でのカルシトニン(CT)の定量、CTmRNAのノ-ザンブロットによる検索とCTmRNA量の定量を行った。外来性にサケのCTを投与すると、内因性CTは減少し、血中カルシウムイオンは著明に低下する。この時血中カルシウムはCT投与量(0.5IU/kgと100IU/kg)で差がなかったが、組織中CT量は50.0±15.1ng/mg、35.2±19.0ng/mgと投与量の増加に従い低下し、コントロ-ル65.2±15.8と有意差を示した。さらに一方、CTmRNAは、低濃度投与では、コントロ-ルの94%と著変がなかったのに対し、高濃度投与により50%と有意の低下を示した。すなわち、外来性CT投与によりCTの合成はmRNAレベルでの減少、新たに合成されたCT含量の減少を来した。すなわち、外来性CTにより、血中カルシウムイオン低下に差がなかったため、血中カルシウムを介さずにC細胞機能を抑制する経路が示唆された。次にC細胞増殖能に対する影響を調べるため、増殖細胞分画について検討した。C細胞増殖能は、チミジンのアナログであるブロモデオキシウリジン(Brdu)を持続投与し、CTとBrduの免疫組織化学的二重染色によりC細胞増殖分画を検討した。C細胞のS期細胞パ-セントは、Brdu投与14日で7.2%に達したが、外来性CT高濃度投与群では2.8%、低濃度投与群では4.3%と有意に低下した。すなわち、CT投与により、C細胞のカルシトニン新生が抑制されるだけでなく、C細胞の増殖期細胞数も減少していることが判った。以上より、外来性CTはC細胞機能を抑制し、その増殖とCT合成を低下させることが判った。さらに、未分化型C細胞腫瘍HMCaに対し、紫外線照射(254nm、0.5〜30J/m^2)を行い、CT産生分泌の変化を検討した。照射10〜30J/m^2では、96〜120時間後に細胞は死滅したが、5J/m^2群では、96時間後より酵素抗体法で陰性であったCTが陽性となった。
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