本年度は虚血性脳浮腫の主体を占める血管源性脳浮腫の際の血管外漏出血清蛋白質の分布の定量的画像化を試みた. 実験には成猫を用い、麻酔下・手術用顕微鏡下に頭頂部大脳皮質を露出し凍結性脳損傷を作成した.血清アルブミンを漏出血清蛋白の指標として用いEvans blue combined serum albumin濃度をPatlakらの持続注入法(1976 J Appl Physiol)により実験期間中一定に保ち、病変作成後6時間目に動物を屠殺した(黒岩).そして直ちに血管内トレ-サ-を生食の潅流でwash outした後、摘出脳を中大脳動脈支配領域で冠状断し一定照度下でEvans blue濃度のstandardと共に写真撮影しdensitometerにより定量化した.また血中Evans bluealbumin complexのspecific activityを求め大脳割面上各部位の血管外漏出アルブミン量(mg/g.brain)を定量的に画像表示した.そして画像に対応する残存した脳の鏡面ブロックより病単各部位の浮腫液量を組織比重法により求め、浮腫病単各部位における増過水分量、浮腫液アルブミン含量を求めた(黒岩、桶田).さらに血管外漏出アルブミン定量に用いたブロックはその後浸潤固定し、組織像との対比を行なった. 以上の結果、病巣に於ける脳浮腫液の分布の定量的画像化は血管源性脳浮腫の際は可能であることが分かった.そして血管外漏出血清アルブミン量と浮腫に程度よく相関すること、凍結脳損傷の際の浮腫液の分布には一定のパタ-ンが有り、各脳回の直下の白質に比べて脳室周囲の白質(Centrum semiovale)の方に浮腫液はより多く貯留する傾向の有ることが判明した.
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