臓器の線維化病巣におけるコラ-ゲン産生細胞の動態を明かにするために、プロコラ-ゲン分子のERーゴルジ装置間の細胞内輸送に関与しコラ-ゲン分泌に必須と考えられるコラ-ゲン結合性熱ショック蛋白質HSP47の線維化病変組織における発現分布を免疫組織学的に解析することが本研究の目的であるが、既に得られていたニワトリHSP47に対するポリクロ-ナル抗体およびモノクロナ-ル抗体ではヒト、ラット、マウス各組織中のHSP47を免疫組織学的に検出できないことが明らかとなったため、固定組織中のヒトHSP47にも反応性の高い抗体の作製を試みた。大量培養したヒト線維芽細胞やヒト胎盤組織の可溶化画分よりゼラチンアフィニティクロマトグラフィ-やイムノアフィニティクロマトグラフィ-を用いてヒトHSP47を精製しようとしたが、ヒトHSP47はニワトリHSP47と異なり極めて容易に蛋白分解を受け、保存が困難で多段階精製が不可能であった。ワンステップ部分精製のヒトHSP47をカラム溶出後直ちに家兎に免疫したが、得られた抗血清はHSP47に対する高い抗体価を示すものの、HSP47以外の蛋白質に対する夾雑抗体を除くことができず免疫染色には使用できなかった。SDS存在下ではHSP47は蛋白分解に対し安定であることが判明したため、SDSーPAGEで分離したバンドを切出したり、ニトロセルロ-スへブロットしたバンドを切出して家兎やマウスに免疫したが、十分な抗体価を得られなかった。また、部分精製のヒトHSP47をマウスへ免疫して抗ヒトHSP47モノクロナ-ル抗体の作製を数度に渡り試みたが反応性の高い抗体は得られなかった。ヒトHSP47の不安定性が抗体を作製する上で最大の障害であり、種を変えてマウスHSPを胎児組織から精製しようと試みたが抗体の作製に耐える純度の抗原は得られなかった。一方、マウスHSP47のcDNAプロ-ブを供与されたので、正常組織や線維化病変組織でのin situ hybridaizationを試みたが現在までにmーRNAの検出に至っていない。
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