研究概要 |
実験的アミロイドーシス発症マウスの脾臓から抽出した粗製のAEFでウサギを免疫して,抗AEF血清を作製した。免疫酵素組織化学の結果,好中球のみが抗AEF血清と反応し,好中球がAEFを産生することが示唆された。そこで末梢血から好中球を分離し,AEFの存否を確めた。AEFは好中球に存在し,移入した好中球数とアミロイド沈着量には正の相関関係があった。抗AEF血清による免疫電顕で,好中球のサイドゾルに陽性反応物質が存在した。また、脱顆粒処理質の好中球に強いAEFを認めた。この事からAEFは好中球のサイトゾルに存在すると考えられる。 イオン交換クロマトグラフィ-,高速液体クロマトグラフィ-で脾臓からAEFを抽出精製した。精製したAEFの分子量は約15KDaであった。アミノ酸シ-ケンサ-でN末端はブロックされていた。ガスクロマトグラフィ-で,グルコ-ス,マンノ-ス,ガラクトサシン・シアル酸が検出され、AEFは糖蛋白と思われる。 AEFがマクロファ-ジに及ぼす影響を調べるため、マウスのクッパ細胞を培養し、その培養液にAEFを添加した。添加質クッパ細胞は膨瘤し,胞体内には多数の空胞が形成された。走査電顕では細胞膜構造が複雑となり,透過電顕では空胞は粗面小胞体が拡張したものであった。この変化は変性所見であり、AEFはマクロファ-ジに対して障害的に作用すると思われた。以上のことからAEFは炎症性刺激により活性化された好中球が産生し,マクロファ-ジに作用して,アミロイドの前駆蛋白(血清アミロイドA蛋白,SAA)の分解に関する酵素活動の低下或はectoenzymeの減少きたし,SAAの分解処理能力の低下をもたらして,アミロイドの沈着が促進されると考える。
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