2つのカメラとpipeline systemを持つ画像処理装置を使用することによって、単離心筋細胞における速い細胞内カルシウム濃度の変化を捉えることができた。これによって、初めてカルシウム波をモデルとして不整脈発生の最小単位である細胞レベルでの研究を行うことが可能となった。その結果は、 (1)17msecのインタ-バルにて得た正常収縮像 心筋細胞の膜電位を-45mVから+10mVに脱分極することによって、細胞内カルシウム濃度は細胞全体で均一に上昇し始め、110msec付近でピ-クに達するが、細胞は引き続き収縮し177ー444msecにて最も短くなる。1011msecでは両者とも前の状態に戻った。 (2)67msecのインタ-バルにて得たカルシウム波像 心筋細胞を脱分極状態に保つことによって細胞の様々な場所からカルシウム波が生じた。カルシウム波は、急峻な立ち上がり(約10ミクロンの間に500nMから1200nMにそのカルシウム濃度が上昇する)と緩やかな下降脚というプロフィ-ルと一定の速度(100μm/sec)を持つことが分かった。 このように、当初の研究計画にそって、(単離心筋細胞における速い細胞内カルシウム濃度の変化を捉えることができた。 今後の問題点として、カルシウム波のメカニズムを知るため細胞膜や細胞内小器官といった微細な領域でカルシウムイオンの動きを直接みるなどにより精度の高い検討を行う必要が生じた。これを可能とするため、高速の共焦点レ-ザ走査顕微鏡の開発にも取り組みたい。この変更によって、これまで以上の高い時間的、空間的解像度を期待でき、より微細な細胞内コンパ-トメントにおけるカルシウム濃度の変化を捉えることができると考えられる。
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