研究概要 |
アニサキス症は魚類を生食する習慣をもつ我国においてよく知られた疫患である。内視鏡が発達した現代においても、肉芽腫を形成する慢性感染例や、激症型の再感染に関する疫学調査のために簡単な免疫診断法を開発する余地が残されている。そのためには交差反応性を有する粗抗原に代わる特異性の高い抗原を遺伝子工学的手法で合成することを目標とし、特異抗原の検索を行った。まず、アニサキス第3期幼虫よりguanidinium/hotphcnol法でRNAを抽出し、 ^<35>Sーmethionine存在下でmRNAのin vitroでの翻訳反応を行った。その結果42KDのポリペプチドが抗原として認められた。この抗原の特異性を検討するために、他種線虫感染人血清(Toxocara,Dirofilaria)との交差反応性についても調べたが、42KD抗原ポリペプチドはいずれの抗血清とも反応しなかった。次に第3期幼虫を ^<35>Sーmethionineを用いてin vitroでラベルし抗原の分子量をin vitro mRNAの翻訳産物の抗原ポリペプチドと比較した。すなわち、第3期幼虫を ^<35>Sーmethionine存在下でmethionineーfree RPMI1640で培養し濃縮した培養上清をESproductsとし、また虫体粉砕物のPBS抽出物をSomaitc extractとして作成した両抗原について感染人血清を用いてin vitro翻訳産物と同様に免疫沈澱を行った。その結果Somatic extract中に約100KDの抗原を認めた。現在までのところ、第3期幼虫で発現される抗原とmRNA由来の抗原ポリペプチドとの関連は不明であるが、翻訳産物中の42KD抗原の特異性が高いことから、第3期幼虫のcDNA libraryから45KD抗原をコ-ドするcDNAを単離し、組換え抗原を合成する価値があると考えられる。
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