研究概要 |
培養系においてTrypanosoma b.gambiense(Tg)の血流型(BF)の増殖はマンノ-スの添加により阻害される。この現象を見出したのは支持細胞を用いた培養系においてである。Tgの代謝を研究するには支持細胞を用いないですむ培養系を確立する必要がある。種々試した結果,基礎培地としてMEMとLー15を等量混合したものを用い,これに牛胎仔血清を10%に加えた培養液を用いるとよいことが判った。BFによる放射性マンノ-スの取り込みはグリセロ-ルにより抑制されない。またグリセロ-ルはBFのエネルギ-源となる。 ^<14>Cーマンノ-スの取り込みは5分ぐらいまでエクスポネンシャルに増加する。T.b.brucei(Tb)についてはグルコ-スとマンノ-スはBFの細胞膜通過チャンネルで競合するということがほぼ定説になっている。ところがこのTgについて測定したところ0.018mMの ^<14>Cーマンノ-スに対して非放射性グルコ-スを10mMの濃度で添加してやっと ^<14>Cマンノ-スの取り込みが抑制され,50mMの濃度,つまり2,500培で50%抑制がかかった。前説が正しいとするとおよそ等濃度で50%抑制がもたらされるはずである。培養系におけるマンノ-スによる増殖阻害も40倍濃度のグルコ-スによって阻止できなかった。マンノ-スが解糖系の始めの方の段階で効いているとすれば,中間代謝物質で6単糖の最後であるフルクト-ス-1,6-ビス燐酸を添加すればマンノ-スによる増殖阻害を阻止できる可能性がある。ところが,驚くべく,フルクト-ス1,6-ビス燐酸は単独でマンノ-スによりもはるかに低い濃度でBFに障害を与えた。マンノ-スを添加して培養したBFを電子顕微鏡で観察すると2時間目ですでに細胞質に変化が認められ,グライコソ-ムの変性もみられた。上記の様な阻害作用は生活史上,ツェツェバエの中にみられるプロサイクリックに対しては認められなかった。
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