研究概要 |
ニュ-モシスチス・カリニ細胞壁多糖の解析を行なうため、先ず種々の多糖類溶解酵素(-80℃保存)に対する細胞壁の感受性を調べた。この中でβー1,3ーglucan(yeast glucan)溶解酵素であるZymolyascがinvitroにおいてニュ-モシスチス・カリニの嚢子壁を溶解することを光学ならびに電子顕微鏡を用いて明らかにし、βー1,3ーglucanが嚢子壁の主要構成多糖であることを強く示唆できた。またZymolyaseにより嚢子壁を溶解された嚢子は間接蛍光抗体では抗嚢子表面抗原(110KD)に対するモノクロ-ナル抗体(-80℃保存)と反応しなかった。しかしZymolyase処理嚢子浮遊液の遠心上清をWesternーblotting法で調べたところ、この表面抗原が検出された。次いで細胞壁の主要骨格多糖の合成阻害薬によるニュ-モシスチス・カリニの細胞壁形成に及ぼす影響、さらに虫体の増殖に及ぼす影響をin vivoで検討した。ラットに免疫抑制剤の一つであるプレドニゾロン(20mg/kg)を5週間投与(s.c.)した後、βー1,3ーglucan合成阻害薬として知られるアクレアシンA2.10及び25mg/kgをラットの腹腔内に毎日2週間投与したところ、アクレアシンA10mg/kg投与群では著しく嚢子数を減少させ、2mg/kg投与群でさえ、嚢子数の増加は認められなかった。つまり治療群において嚢子数が対照群より著しく少なく、薬剤投与開始時から嚢子数の増加は阻止されていた。さらに病理組織学的には、肺胞腔内に好酸性泡沫物質の充満した重度の肺炎像はステロイド処理した対照群では多くの個体で認められたが一方治療群では例外的にみられたにすぎなかった。嚢子に及ぼす影響を電子顕微鏡を用いて検討したところ、前嚢子期における嚢子壁の形成を阻害しているのみならず、前嚢子への細胞障害(前嚢子の細胞質の顕著な変性)により嚢子への成熟をも阻害していた。次年度は更に詳細な投与量、方法の検討、及び予防効果の検討を行なう。
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