研究概要 |
ニュ-モシスチス・カリニの嚢子壁を形成する主要構成多糖がβ(1,3)glucanであり,その合成阻害薬であるアクレアシンAが嚢子壁の形成を阻害するのみならず重度の肺炎を抑えることが判明した。今回は,その予防効果並びに本薬剤と既知のカリニ肺炎の治療薬であるDT合剤との併用効果について検討した。1)アクレアシンAの予防効果:ラットにプレドニゾロン投与開始時よりアクレアシンA(2mg或は10mg/kg)を連日投与(i.p.)し予防効果を検討した。Pc嚢子陽性ラットは対照群では92.9%(13/14)であったが,10mg投与群においては0%(0/12),2mg投与群においても20.0%(3/15)であった。また嚢子数(1000倍拡大視野100視野に観察された嚢子数)における比較でも対照群で平均610であるのに,10mg投与群では0,2mg投与群では2であり,感染が認められたにしても軽微でありPc肺炎に対するアクレアシンAの著しい予防効果が確認された。2)アクレアシンAとST合剤との併用効果:ラットにプレドニゾロン(20mg/kg)を長期間(7週間)s.c.投与することにより重篤なPc肺炎を発症させることができる。プレドニゾロン投与開始後5週間を経た時点より2週間連日アクレアシンA(0.4或は2.0mg/kg i.p.)およびST合剤(sulfaーmethoxazoleとして0.2,1.0,5.0,25或は125mg/kg,p.o.)を各々単独投与或は両者を併用した。単独投与においてもアクレアシンA2.0mg/kg,ST合剤(sulfamethoxazoleとして5mg/kg以上)では対照群に比較して嚢子数で90%以上の減少を示し病理組識学的にも著効を示した。アクレアシンA0.4mg/kgおよびST合剤(sulfamethoxazoleとして1.0mg/kg)では単独投与では治療効果は認められなかったが両者の併用では嚢子数で85%の減少がみられ,著効を示した。併用による明らかな相乗効果は認められなかったものの,両薬剤の投薬量を減ずることは可能と考えられた。
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