研究概要 |
Escherichia coliO9rfbの全領域を保有するクローン、pNKB26を作成した。トランスポゾン(Tn1000)を用いてこのクローンのTn1000挿入変異株を分離した。さらに種々の欠失を導入したプラスミドといくつかの制限酵素断片をサブクローニングしたものを用いて、E.coliO9rfbの最小領域をおよそ12kbと推定した。ミニセルを用いた解析から、この12kbの領域には少なくとも7つの蛋白をコードする遺伝子があると考えられた。マンノースのみからなるO多糖を合成するE.coliO8,KlebsiellaO3,O5のrfbを分離しE.coliO9rfbとSouthern hybridization法を用いて比較することから、これらのrfbは、(1)4種のrfbに共通な領域、(2)E.coliO9とKlebsiellaO3のみに特異的な領域、の二つに分けられることが明らかになった。共通領域には、4種のO多糖合成に共通な糖供与体である、GDP-mannose合成に関与する遺伝子が存在すると考えられた。Salmonella typhimuriumのGDP-mannose合成酵素であるphosphomannomutaseとGDM-mannnose pyrophosphorylaseの欠失株の相補性試験と、E.coliO9rfb各サブクローンの酵素活性の測定から、共通領域にコードされる50kDaと55kDaの蛋白が、それぞれphosphomannomutaseとGDM-mannnose pyrophosphorylaseであることが明らかになった。この共通領域のDNA配列の決定を行い、phosphomannomutase遺伝子rfbKとGDM-mannnose pyrophosphorylase遺伝子rfbMを決定した。これらの遺伝子を他の菌種のものと比較し、これらの酵素の分子進化について考察した。 本研究の最終目標は、遺伝子産物に対するモノクローナル抗体を作成し、免疫電顕等の手法を用いて細胞内におけるO多糖合成部位を決定することであるが、GDP-mannose合成酵素はいずれも細胞質中に存在し、直接O多糖合成には関与しない。そこで現在rfbKM以外の領域のDNA一次構造を決定しつつある。特に、rfbの特異的領域にはO多糖の特異性を決定する遺伝子があると考えられ、これらの遺伝子の構造、機能の解析と遺伝子産物の細胞内局在性は興味深い。
|