黄色ブドウ球菌Cowan I株より細胞壁を分離し、ドデシル硫酸ナトリウム、トリプシン、ペプシン処理により細胞壁タンパクを完全に取り除いた標品を抗原として、家兎の耳静脈に2mgずつ7日毎に4回免疫を行うとタイコ酸に対して高い抗体価が得られると同時にペプチドグリカンに対する抗体も産生されていることが確認された。得られた抗血清より、ペプチドグリカンに対する抗体の分離方法は、除タンパク細胞壁をさらにトリクロル酢酸で熱処理により精製したペプチドグリカンに抗血清を吸着させ、充分に洗浄した後ペプチドグリカンと反応した抗体をグリシン塩酸バッファ-(pH2.5)で抽出して硫安塩析により濃縮して得た。このCowan I株ペプチドグリカンに対する抗体は、種々の黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌のみならず、ミクロコッカス属や枯草菌のペプチドグリカンをも凝集させることから、主にグリカン鎖の方と反応しているものと思われる。プロテインAを持たない黄色ブドウ球菌Wood46株に対し、抗ペプチドグリカン抗体を作用させゴ-ルド標識を行って走査電顕により観察を行うと、菌の表層全体にほぼ均一に抗体が反応しているのが認められ、分裂直後に生じた新しい面にも、分裂前の古い面にもペプチドグリカンが表層に露出していることがわかった。また、同じようにゴ-ルド標識して急速凍結置換固定法により切片を作製し観察すると、今までタイコ酸とタンパクより形成されていると考えられていた表面の樹枝状構造にも抗ペプチドグリカン抗体が反応しているのが認められた。
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