研究概要 |
平成3年度に得られた実験結果は以下の通りである。 1.枯草菌芽胞の60℃、1時間の静水圧による加圧処理:枯草菌休眠芽胞を60℃で、1,000〜5,000kg/cm^2、1時間加圧処理した時、昨年報告した37℃の場合と同様に、メチレンブル-による染色性の獲得、光学密度の低下、ジピコリン酸やCa^<2+>の遊出など生理的発芽に似た変化が起こって、大部分の芽胞は死滅した。形態的には、37℃、60℃ともに芽胞殻外殻の菲薄化・コルテックスの縮小化・コアの膨張と微細構造の明瞭化など発芽に近い変化を示すとともに、5,000kg/cm^2では20%程度の芽胞にコア内膜の波状化と空胞化が認められた。 2.枯草菌芽胞からのブドウ糖脱水素酵素の抽出と精製:平成2年度では、本酵素サブユニットの一次構造から親水性かつ抗原性の高い部分のペプチドを選び、それに対する抗体を作って芽胞中の2量体非活性型ブドウ糖脱水素酵素の精製を試みたが失敗した。平成3年度では、市販メガテリウム菌由来活性型酵素に対する抗体を作製するとともに、粗酵素抽出液を透析して精製を試みたところ、かなりの非活性型酵素が抗体に結合し、精製が可能になることが最高になってようやくわかってきた。ジピコリン酸存在下と非存在下、高圧条件下と平圧条件下における本酵素の耐熱性の差異を詳細に検討して、芽胞の耐熱性機構の解明に迫る。 3.高圧下におけるジピコリン酸とCa^<2+>のキレ-ト体のゲル化:条件を変えて検討しているが、まだ満足すべき結果は得られていない。そこで、芽胞粗酵素抽出液中にはジピコリン酸結合高分子物質が存在するのではないかと考え、その物質の検索を試みた。その結果、休眠芽胞と発芽芽胞から440Kと230K、SDS処理すると70Kになる蛋白質が検出された。現在、この物質の性質を詳細に検討中である。
|