研究概要 |
芽胞の耐熱性機構を解明するため、静水圧による高圧下での芽胞の生死と酵素蛋白の構造変化、および高分子物質とジピコリン酸との関係を探るべく、以下の実験を行った。 1.芽胞に対する静水圧の影響:枯草菌休眠芽胞は、4℃、1,000〜5,000kg/cm^2、1時間の加圧処理ではほとんど影響を受けなかった。それに対して、37℃、60℃ではメチレンブル-による染色性の獲得、光学密度の低下、ジピコリン酸やCa^<2+>の遊出、形態的には芽胞殻外殻の菲薄化・コルテックスの縮小化・コアの膨張と微細構造の明瞭化などの変化が起こり、生理的発芽に近い状態になってほとんどの芽胞が死滅することがわかった。 2.芽胞酵素蛋白の抽出と精製および耐熱性機構の解明:発芽直後のエネルギ-代謝に重要なブドウ糖脱水素酵素の高圧下での耐熱性を調べるために、本酵素に対する抗体を作製して、芽胞に存在している2量体非活性型酵素の精製を試みている。本酵素サブユニットの一次構造から、親水性かつ抗原性の高い部分のペプチドを選んで作製した抗体では精製ができなかったが、市販のメガテリウム菌由来活性型酵素に対する抗体を用いた場合にはかなりの量の非活性型酵素が結合し、精製に使えることが最近になってようやくわかってきた。今後は、非活性型酵素へのジピコリン酸の結合が高圧下でより強く起こるか否か、耐熱性への影響はどうかについて詳細に検討する。 3.ジピコリン酸結合高分子物質の検出と精製:芽胞に大量に存在するジピコリン酸の役割を明らかにする目的で、抗体を用いてジピコリン酸結合高分子物質の検索を試みている。その結果、休眠芽胞と発芽芽胞から440Kと230K、SDS処理すると70Kになる蛋白質をはじめて見つけた。現在、この物質の性質を詳細に検討している。
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