ペニシリン結合蛋白(PBP)のクロ-ニングを行うため、マ-カ-を付したPBPの作製を行なった。即ち、黄色ブドウ球菌株1039(ペニシリナ-ゼ非産生、レストリクションマイナス)を、アンピシリン(ABPC)を加えた培養液で継代する方法、ニトロソグアニジン処理により突然変異を誘導する方法の二つを用い、ABPC耐性株を作製した。 前者によりABPCの最小阻止濃度(MIC)が0.2μg/mlの1039親株から出発して漸増的に濃度を上げたABPCを含むLーブロスで6回、21日間の培養の後、MIC100の変異株1039AR(100)を得た。後者からは、一段階の耐性選択によりABPC50μg/mlのHI平板に増殖可能の耐性株7株を得た。これら変異株の細胞質膜を抽出し、^<14>CラベルしたペニシリンG(PCG)と30分反応させPBPパタ-ンをSprattのポリアクリラミド電気泳動を用いて解析した。その結果、ひとつの株(AR1)を除く全ての株でPBP2の過剰産生(親株の約5倍)が認められた。 一方、AR1では、PBP2の過剰産生は、ゲルの染色パタ-ンから認められたがPCGとの反応性が弱く、PBP2のペニシリン結合部の突然変異が示唆された。次にAR1から染色体DNAを抽出し、Sau3AI制限酵素で部分消化した。このDNAとBamHI切断したシャトルベクタ-pSC298(pRIT5プラスミドのクロラムフェニコ-ル耐性遺伝子を含む断片をoriとともにpHSG298のClaI部位に結合したもの)とライゲ-トし、エレクトロポレ-ション法を用いて1039株を形質転換し、ABPC10μg/mlを含む平板で選択し、2株の耐性変異株を得た。現在これに2株から得た組換えプラスミドの解析を行なっている。
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