ロタウイルスの自然界での生態を解明することは、ロタウイルスワクチン開発の上で必須のことであると考えられる。本研究の目的は、ヒトおよび動物に由来するロタウイルスの遺伝子の多様性をgenogroup(遺伝子の相同性に基づく分類)の立場から見て明らかにすることと、この多様性の形成に、ロタウイルスの種間伝播(interspecies transmission)すなわちロタウイルスが種の異なる宿主に感染することが関与しているのか、またそのような種間伝播はどのような程度で起こっているのかということを解明することである。 このような目的を達成するため、平成3年度では、特に、ヒトロタウイルスと動物ロタウイルスの遺伝子レベルでの相対的相同性について検索した。すなわち、7つの種の異なる宿主に由来する14株のロタウイルスの遺伝子RNAをRNAーRNAハイブリディゼ-ション法を用いて調べたところ、同一の動物種に由来するロタウイルスの遺伝子レベルでの相対的相同性は、異なる動物種に由来するロタウイルスどうしの遺伝子レベルでの相対的相同性よりも明らかに高いことがわかった。このことは、一般的にいって、動物ロタウイルスがヒトロタウイルスとは異なるgenogroupに属していることを意味している。しかし興味深いことに、ヒトおよびネコに由来する一部のロタウイルス株が例外的に同一のgenogroupに属していることが明らかになり、ヒトロタウイルスと動物ロタウイルスとの間で伝播が起こっていることを強く示唆する証拠が得られた。
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