ロタウイルスの自然界での生態を解明することは、ロタウイルスワクチン開発の上で必須のことであると考えられる。本研究の目的は、ヒトおよび動物に由来するロタウイルスの遺伝子の多様性をgenogroup(遺伝子の相同性に基づく分類)の立場から見て明らかにすることと、この多様性の形成に、ロタウイルスの種間伝播(interspecies transmission)すなわちロタウイルスが種の異なる宿主に感染することが関与しているのか、またそのような種間伝播はどのような程度で起こっているのかということを解明することである。 (1)過去の8年間の疫学的研究の際に集めた511検体のロタウイルス陽性検体の64%にあたる328検体について遺伝子RNAのelectropherotypeをしらべ、22のelectropherotypeを決定した。これらのウイルス遺伝子RNAを、RNAーRNAハイブリディゼ-ション法により調べたところ、ヒトロタウイルスWa株、KUN株およびAUー1株をプロトタイプとする3つのgenogroupに分類されることを明らかにした。また、まれではあるが、このようなgenogroupの間でreassortmentをおこしたと考えられる株の存在も明らかにした。 (2)7つの種の異なる宿主に由来する14株のロタウイルスの遺伝子RNAを、RNAーRNAハイブリディゼ-ション法により調べたところヒトロタウイルスとは異なるgenogroupが存在することを明らかにした。しかし興味深いことに、ヒトおよびネコに由来する一部のロタウイルス株が例外的に同一のgenogroupに属していることが明らかになり、ヒトロタウイルスと動物ロタウイルスとの間で伝播が起こっていることを強く示唆する証拠が得られた。 本研究により、ヒトロタウイルスと動物ロタウイルスとの遺伝子レベルでのかかわりが明らかになった。
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