C型インフルエンザウイルスの宿主細胞による選択

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670191
• 研究機関: 山形大学
• 研究代表者: 菅原 勘悦 山形大学, 医学部, 教務職員 (60110673)
• 研究分担者: 西村 秀一 山形大学, 医学部, 助手 (50172698)
• キーワード: C型インフルエンザウイルス / ヘムアグルチニン・エステラ-ゼ蛋白 / 抗原変異株 / 宿主による選択

研究概要

A型やB型インフルエンザウイルスでは、分離継代の際に一度でも発育鶏卵を通過させると、自然界のものとは抗原性が異なるウイルス集団に変化することが知られている。本研究では、C型インフルエンザウイルスの抗原性に及ぼす分離継代歴の影響を把握する目的で、発育鶏卵とHMVーII細胞の双方で分離した6株のC型ウイルス(山形/1/88,山形/4/88,山形/7/88,山形/8/88,山形/10/88,山形/11/88)から種々の継代歴をもつウイルスを調整し、それらの抗原性を8個の抗HE単クロ-ン抗体を用いて比較解析した。以下にその成績を要約する。
1.発育鶏卵に接種されたウイルスはいずれも初代からよく増殖しただけでなく、同宿主で継代を重ねても抗原性に変化は認められなかった。またHMVーII細胞で分離継代した各株から限界希釈法により多数のクロ-ンを採取し、各クロ-ンの発育鶏卵での増殖能を調べたところ、いずれもよく増殖することが明らかになった。これらの成績から、解析対象の6株に関する限り、発育鶏卵で特定の抗原変異株が選択されることはないものと推測される。
2.山形/1/88,山形/10/88並びに山形/11/88株ではHMVーII細胞で継代を重ねても抗原性に変化は認められず、同細胞で抗原変異株が選択されることはないものと推測された。ところが山形/4/88株や山形/7/88株をHMVーII細胞で継代すると、発育鶏卵で分離継代したものとは抗原性が異なるウイルスに変化し、山形/8/88株でも抗原性にこそ変化は見られなかったが、継代を重ねることによってHMVーII細胞で非常によく増殖しうる変異株が選択されることが明らかになった。
3.以上の成績から、C型インフルエンザウイルスでは抗原変異株の選択は発育鶏卵よりむしろHMVーII細胞で起こり、しかもその頻度はかなり高いものと推測された。

研究成果

• [文献書誌] H.Nishimura,M.Hara,K.Sugawara,K.Takiguchi,F.Kitame,Y.Umetsu,A.Tonosaki and K.Nakamura: "Characterization of the cordーlike structures emerging from the surface of influenza C virusーinfected cells." Virology. 179. 179-188 (1990)
• [文献書誌] 松嵜 正實,安達 和仁,菅原 勘悦,西村 秀一,北目 文郎,中村 喜代人: "C型インフルエンザウイルスによる実験室内感染" 山形医学. 8. 41-51 (1990)
• [文献書誌] K.Sugawara,H.Nishimura,S.Hongo,F.Kitame and K.Nakamura: "Antigenic Characterization of the nucleoprotein and matrix protein of influenza C virus with monoclonal antibodies." Journal of General Virology. 72. 103-109 (1991)
• [文献書誌] K.Takiguchi,K.Sugawara,S.Hongo,H.Nishimura,F.Kitame and K.Nakamura: "Protective effect of serum antibody on respiratory infection of influenza C virus in rats." Microbiology and Immunology.
• [文献書誌] Y.Umetsu,K.Sugawara,H.Nishimura,F.Kitame and K.Nakamura: "Selection of antigenic variants of influenza C viruses by the host cells." Virology.