研究概要 |
アデノウイルスEIA遺伝子の転写調節領域には数個のエンハンサ-が存在し、EIA自身の転写と他の初期遺伝子の転写調節を行っている。我々はEIAの転写制御機構の解明を目的にHeLa細胞核抽出液からEIAエンハンサ-コア配列(5'A/C GGA A/T GT 3')に結合する蛋白質を同定し、EIAーFと名づけた(Nucleic Acids Res.17,10015,1989)。今回λgtll HeLa細胞cDNAライブラリ-を用い,EIAエンハンサ-コア配列をプロ-ブとしてSouthーWestern法を試みた結果,このプロ-ブに特異的に結合するファ-ジクロ-ンを得た。そしてこのファ-ジクロ-ンが産生するfusion蛋白を用いてゲルシフト法,及びメチル化阻害実験を行ったところ,この蛋白はEIAエンハンサ-コア配列に特異的に結合した。さらにcDNAの塩基配列はets oncogeneファミリ-と非常に高いホモロジ-を示し,その領域はDNA結合に必要なETSドメインに相当した。また,このcDNAをプロ-ブとして用い,ヒト由来細胞株(KB,HeLa,HT1080,MG63)に約2.5KbのmRNAがノ-ザン法で検出された。さらにこのmRNAはアデノウイルス感染により2ー5倍増加した。現在、EIAーF蛋白の全構造を明らかにするためにN末端側の塩基配列を解析中である。またEIAーF cDNAをプロ-ブに用いてヒトの由来のゲノムDNAライブラリ-からEIAーF遺伝子を分離しており,遺伝子の構造についても検討中である。
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