研究概要 |
クロ-ン201と同様の手法で,インフルエンザB型ウイルスのNS遺伝子の欠落変異体(AWBYー234)を分離した。NS遺伝子のシ-ケンシングの結果、これは同遺伝子のプラスセンスの310〜312のUUUの1個が欠落しており,その結果おこるフレ-ムシフトのために,アミノ酸数わずか90個から成るNS_1(野生型では281)しかできないことが判明した。これも201同様,NS_1のC端側を大幅に欠く変異体で,感染早期に高度のCPEを発現した。感染早期の細胞の電子顕微鏡像は,変異体に特有の変化を示さなかった。AWBYー234では,多重感染による感染性ウイルス産生の増加がみられ,ウイルスRNAの電気泳動上,通常の8個のRNA分節以上に,さまざまの大きさのsubgenomic RNAが認められた。このことは,変異体ウイルス粒子は,伸長の不完全なRNA分節を多数含み,且つ不完全な伸長は特定の遺伝子分節に限定されるのではないことを示唆している。 一方我々は,インフルエンザA型ウイルスから,NS_2に2個の点変異をもつクロ-ン182を分離した。これは多重感染によって容易に欠損性干渉(DI)粒子を産生し,それぞれの粒子は多数のDIRNAを含有していた。容易にDI粒子が産生され,効率よくDIRNAが合成されるということは,遺伝子DNA分節とD1 RNA合成の際の競合が強く起こっていることを示唆するものである。 これらを総合すること,NS_1とNS_2と,インフルエンザがウイルスRNA複製レギュレ-タ-として働き,前著はRNA鎖の伸長に,後者は複製の活性化に寄与していると考えられる。この辺のところを,今後研究していく予定である。
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