研究概要 |
主要組織適合性複合体(MHC)のクラスIIの差に基づいて惹起される移入細胞対宿主反応(GVHR)に際して自己免疫様病態が出現することが分っていた。代表的例としてル-プス腎炎が挙げられる。我々はこれまでに報告のなかった肝や膵にも病変が出現することを見出した。肝では胆管への細胞浸潤(慢性非化膿性胆管炎)の他に関芽腫もみられた。これは今まで原因が不明とされた原発性胆汁性肝硬変の初期病変に類似していた。肝病変局所に集ってくる細胞を免疫組織化学的に検索すると、CD4(L3T4)陽性細胞とCD8(Lytー2)陽性細胞とがほぼ同数検出された。前者は発症に関わっていると考えられたが後者の役割は不明だった。そこで,宿主からCD8陽性細胞を除くため抗Lytー2抗体を投与した。その結果、肝病変が増強することが分かった。しかも原発性胆汁性肝硬変の際にみらる抗ミトコンドリア抗体(抗ピルビン酸脱水素酵素が含まれる)の産生もみられた。また唾液腺の細胞浸潤も強まりSicca症候群に類似した病僚を呈してくることも分った。CD8陽性細胞は宿主から由来し,自己免疫の発現に抑制的に働いていると考えられるので,さらに検討を続けている。
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