研究概要 |
良性のB細胞増殖性疾患のCastleman′s diseaseでは、B細胞の増加、形質細胞の増加、そしてポリクロ-ナル高γグロブリン血症が認められる。本事実は、我々が明らかにした本疾患にILー6の持続産生が深く関与することで理解できる。しかし、リンパ節腫大が極めてゆっくりと生じること、細胞分裂像が観察されないことは、本疾患においてはB細胞の増殖が亢進するのではないことを示唆している。事実本疾患のリンパ節細胞をin vitro培養したところ、静止B細胞の長期生存が観察された。ところで、bclー2ーIgH合成遺伝子を導入したtransgenic mouseではCastleman′s diseaseと同様の病態を示すと同時に、脾細胞の長期生存が認められた。このため、本疾患リンパ節細胞のbclー2遺伝子のIgH遺伝子座への転座の有無を検討した。5例の患者リンパ節のDNAを用い、bclー2 cDNAをプロ-ブとしてSowthem hybridizationを行ったとこわ、すべてgerm line patternであった。次にPCR法を用いてbclー2遺伝子の転座の有無を検索した。即ち、bclー2 exon2のmajor break point(MBR)に持異的な配列20merを5'側primeとして、IgH鎖J領域共通配列20merを3'側primerとして用い、PCR法で増幅を行ったところ、患者4例中1例に増幅されたフラグメントが検出でき、このフラグメントがbclー2 cDNA,J_H cDNAとhybridizeすることを確認した。このことからリンパ節細胞のごく一部に、bclー2遺伝子のIgH遺伝子座への転座が生じていることが示された。今回はMBR部での転座であるが、bclー2の他の部位でのあるいはJ領域以外への転座も可能性として残されている。以上の結果より、本疾患リンパ節細胞の長期生存にbclー2遺伝子発現が関与していることが示唆された。今後はbclー2遺伝子発現をmRNAを用いたPCR法で確認すると同時にbclー2蛋白発現を抗bclー2抗体を用いた免疫組織化学法で確認する。また、濾胞性リンフォ-マでbclー2遺伝子の転座が多く観察されていることから、本疾患の悪性化機構を解析する。
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