生体内の免疫反応はリンパ系細胞によって産生される多くの種類の液性因子(リンホカイン)によって総合的に調節されている。特にインタ-ロイキン2(ILー2)はTおよびB細胞の分化・増殖のみならずナチュラルキラ-(NK)細胞の抗腫瘍効果の増強など、免疫反応全般に深く関与している。一方、ILー4やILー6はILー2に対して時に互いにきっ抗し、あるいは時に相乗的に作用しリンパ球の増殖・分化に関与している。これらの相互作用の機序を明らかにするため、本研究ではILー2受容体に注目し、私達が最近開発に成功したヒトILー2受容体β鎖に対するモノクロ-ナル抗体および遺伝子を用いて解析した。 【1】ILー4、ILー6によるILー2受容体発現の調節:ILー2、ILー4、ILー6のいずれのリンホカインにも反応して増殖するヒトT細胞株(KTー3)を用いて、ILー4がILー2受容体α鎖の発現には影響を及ぼさないがシグナル伝達分子であるILー2受容体β鎖の発現をきわめて強く抑制し、結果的に高親和性ILー2受容体(αβ複合体)を減少させることを明らかにした。また、ILー6はILー2受容体α鎖を増加させ、逆にβ鎖を減少させる。 【2】ILー2受容体β鎖遺伝子導入による解析:ヒトILー2受容体β鎖遺伝子をILー6依存性マウス細胞株に導入、発現させこの細胞がILー6のみならずILー2にも反応して増殖することを見い出した。 最近、ILー2(β鎖)、ILー4、ILー6をはじめ多くのサイトカイン受容体の構造に共通構造がみられることが明かとなり、サイトカイン受容体ファミリ-の概念が形成されつつある。本研究によって明らかにされた現象は、サイトカイン受容体間に相互の発現調節機構が存在すること、またサイトカインの刺激伝導が相互に影響する、もしくは共通の伝導経路が存在するという魅力的な仮説を提示している。
|