研究概要 |
長年にわたる騒音暴露が,工場作業者に難聴や血圧の上昇等の影響を誘引することはよく知られている。騒音がどのようにしてこれらの原因となるかの機序については種々の説がある。しかし騒音が交感神経緊張を引き起こし,これがため内耳の血行,あるいは全身の血行等に障害を生ずるとする意見は有力である。しからばどのような指標を利用すれば最も的確にその自律神経系への影響を見いだすことが可能であろうか。これには内耳のEndocochlear Potential (EP)の変動を指標にすることが重要であると考えられる。なかでもDifussion Potentialであるnegative Potentialの変動を追求する。 騒音負荷の影響といっても負荷騒音の周波数構成はかなり広い。そこで、平成3年度は主として可聴域限界の10K〜30KHzの超音波域での影響をEPを指標として追求し、その影響が認められなくなる音圧を周波数別に求めた(暴露時間は一定)。これにより一種の許容水準を求めたことになる。CMは蝸牛を露出し、differential recording (scala vestibuliとscala tympaniとから)でAPはscala vestibuliから,またEPはscala mediaから導出した。 またEPの変動中でもnegative potentialのそれは内リンパ液中のK^+イオン濃度の変動にもとづくと考えられているので,K^+イオンエクスチェンジャ-溶液を含んだガラス管電極を用いてElectrochemical Potentialを求め,これをK^+濃度の変化を追求する実験を実施した。
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