研究概要 |
最近におけるヒ素系化合物半導体の使用量の急増に伴って,これらに含有されるヒ素は,ヒ素化合物の結晶構造の違いにより,またガリウムやインジウムなど他元素と共存した場合に,その生体内動態や毒性,発がん性が異なることが推察される。そこで本年度は,気管内注入法を用いた予備実験および金属元素,生化学的指標の測定方法の開発,応用を中心に,既存の分析装置と新たに購入した水素化物発生装置を使用して検討し,以下の結果を得た。 1.ハムスタ-に100mg/kg体重のガリウムヒ素およびインジウムヒ素を短時間に2回に分け気管内投与したが,1週間の観察期間において,特に顕著な全身性症状は認められなかった。但し,1回の投与液量は0.3〜0.35mlが限度であった。 2.ヒ素代謝物については水素化物を用いた連続還元気化ー原子吸光法,またガリウムとインジウムについてはフレ-ムレス原子吸光法での測定方法を確立した。4種のヒ素代謝物(無機ヒ素態,メチルヒ素態,ジメチルヒ素態,トリメチルヒ素態)の検出限界はほぼ1ng,ガリウム15ng/ml,インジウム5ng/mlであり,必要に応じてAPDCーMIBK抽出(pH4)を併用すれば,生体試料の分析に充分供し得ることを確認した。 3.生物学的指標としてのポルフィリン類(ウロポルフィリン,コプロポルフィリン)については,C_<18> Bondapakカラムを用いたHPLCー蛍光光度法(Ex;398nm,Em;625nm)での分析方法を確立し,満足のいく感度,精度を得た。 以上の分析方法を用いて,ガリウムヒ素およびインジウムヒ素を気管内投与したハムスタ-各30匹における主要臓器,血液,尿,糞中の主要代謝物の変化について検索していく予定である。
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