農薬に起因する光アレルギ-性皮膚障害の評価を行うため、症例解析および動物実験により検討し、以下のごとき種々の知見を得た。 1.農薬に起因する皮膚障害の症例解析:収集された農薬による皮膚障害罹患症例のうち、光線過敏症が疑われた症例の頻度は全体の約2%程度と比較的低率であった。原因舟薬は多岐にわたり、有機燐殺虫剤、硫黄殺菌剤がやや多いようであるが、光アレルギ-性接触皮膚炎と確定診断されたものは少ない。 2.農薬による光アレルギ-性皮膚障害の発症の評価に関する実験的研究:(1)laserーDoppler flowmetry(LDF)法による反応の評価:モルモットにより、光アレルギ-性試験の反応性の評価を農薬Captan、PNCB Zinebについて同法と肉眼的判定法とで比較検討した。同法では、肉眼的判定とはやや異なり、血流量でみると、PNCBの高濃度群および低濃度群の24時間、48時間値とCaptanは高濃度誘発群の24時間値の判定で、紫外線非照射群の成績に比べて照射群の成績が有意に高い値を示した。また若干の農薬の間で交差反応性の存在が確認され、同法の光線過敏症評価上の有用性がうかがわれた。しかし、同法で肉眼的判定の陰性と偽陽性の区別を行うことは困難であった。(2)StripーAdjuvant法による農薬の光線過敏症の評価:症例解析や我々の経験、文献等の成績から光線過敏症の起因性が疑われたジネブ、キャプタン、PNCB、DDVP、クロロタロニル、パラコ-トなど多数の農薬について検討評価した。これら農薬のうち、クロロタロニルは中等度乃至高度の光アレルギ-性反応を、またPNCBおよびパラコ-トで軽度の光アレルギ-性反応がうかがわれたが、DDVPでは、得られた成績に差異が認められた。 以上の成績から、光アレルギ-性皮膚障害の評価上のLDF法の有用性と、若干の農薬の光線過敏症発症の可能性が明らかにされた。
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