研究概要 |
遅発性神経毒物であるDFPの標識化合物([3H]DFP)をニワトリ静脈内に投与し、経時的に屠殺し、各組織中ラジオアイソト-プ(RIと略記)濃度を測定し、その分布を検討した。その結果、腎臓と肝臓にRIが高濃度に分布することがわかった。神経組織への分布も比較的高く、検討した中では小脳が最高値を示し、視葉、大脳がこれに続いた。RIの組織タンパク質に対する共有結合についてもあわせて検討した。その結果、神経組織タンパク質と[3H]DFPは共有結合することが確認され、毒性発現との関連で注目される。これらIn vivoの実験に加えて、大脳と脊髄の膜画分(50,000gペレット)に対するラジオリガンド([3H]DFP)の特異結合について In vitro的に検討した。その結果、両神経組織において、[3H]DFPに対して異なる親和性を有する2種類以上の特異的結合部位が存在することが示唆された。そのうちの一種類はアセチルコリンエステラ-ゼの活性化部位とも考えられるが、他の一種(あるいはそれ以上)については、別の実験(阻害実験)とあわせ考えると遅発性神経毒物の標的である可能性もある。現在までのところある種のエステラ-ゼ"NTE"阻害が遅発性神経毒性発現に関与しているとされるが、まだ不明な点も多い。今回見い出された特異的結合部位と神経毒性との関連については今後さらに追求したい。
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