研究概要 |
希土類元素は種々の機能性材料に用いられるようになり需要が増しているがその生体への作用はあまり知られていない。そこで実験動物に種々の希土類元素化合物を役与しそれらの生体影響を検討した。 まず生体試料中の希土類元素の定量法を検討した。テルビウム(Tb)の定量法はすでに確立してある。今年度はユ-ロピウム(Eu)とジスプロシウム(Dy)について,2,6ーピリジンカルボン酸をキレ-ト剤として用いたケイ光法による高感度定量法を確立した。 マウス(ICR,♂,5週令)にEu,Tb,Dyの塩化物を25mg元素/kg静脈内投与し,投与20時間後における投与元素の臓器分布を調べた。投与されたEu,Tb,およびDyはいずれも肝蔵,肺,脾臓に高濃度に分布すること,投与20時間後までは殆んど尿および糞中へ排泄されないことがわかった。また役与元素の分布した臓器では,対照群に比べてCa濃度が著しく増加することが明らかとなった。 次にマウスに他の希土類元素化合物(イットリウム(Y),ランタン(La),セリウム(Ce),ネオジム(Nd),サマリウム(Sm),ガドリニウム(Gd),ホルミウム(Ho),エルビウム(Er),およびイッテルビウム(Yb)の塩化物)を静脈内投与した。投与元素の分布は,まだ定量法を検討中なので不明であるが,肝臓,肺,脾臓でCa濃度の増加がみられたことから,臓器中Ca濃度増加作用が希土類元素に共通した作用であることが明らかになった。しかし増加のしかたは投与した元素によって異なっており,原子番号(原子量)とは特に相関性は認められなかった。
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