研究概要 |
1.千葉大学理学部小湊実験所,天津小湊町役場,内浦山県民の森事務所,東京大学農学部演習林,千葉県衛生研究所の現地各施設に事情を説明,情報交換や研究協力を依頼した。 2.東大演習林より,過去10年間の現地気象観測デ-タを入手し,ヤマビル(ヒルと略記)大発生との関連性を推計学的に検討した。 3.4月から1991年2月まで毎月,生息密度を定点調査し,活動は12月2日(例年は10月)まで,地表存在は12月23日まで認められ,温暖化の影響と推定された。8月の1週間連続調査では颱風雨下の生態観察。 4.6月には東大演習林の実験室内産卵が成功したが,7月7日には吉葉の観察定点での初めて卵塊を発見した。 5.ヤマビルの吸血による必発症状は吸血痕からの凝固性を失った血液の特続性流出で,出血時間(沢紙法)は60分以上に延長し,ヒルが注入するヒルジンなどの作用によると考えられるが,度々吸血されているうち1990年(被吸血歴3年)には吸血後の流血に凝血を生じ,10分程度で止血し,吸血したビルが数日内に死ぬようになった。 6.実験動物(ウサギ,ラット,マウス)をヤマビルに繰返し吸血させても,ウサギをヤマビル頭部抽出物で免疫しても,5と同様な免疫様現象が見られた。 7.上記5,6のように(症状や緩和,吸血ヤマビルの致死作用)なったヒトや動物の血清にはヤマビルの頭部の抽出物に対する抗体が形体されていることをELISA法で証明し,免疫様現象の原因と判った。 8.新たな天敵は,諸動物の検索にも拘らず発見されなかった。 9.今回のヤマビル異常発生は依然終息に至らないとはいえ,宿主動物(シカ,サル他)血中に生ずる抗体により生息密度を調節〜制限されていると考えられる。
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