研究概要 |
正常血圧の成人男性8名(平均年齢49.0±4.4歳),未治療の境界域高血圧男性5名(平均年齢56.2±1.8歳)について,午前9時,午後9時,午前3時に標準化したストレス負荷(暗算3分,cold face test1分,Tilting 0°,20°,60°,90°各3分)を行い,血圧,R-R間隔,心拍出量,カテコラミンの反応を測定した.測定時刻,血圧群間で,ストレス負荷に対する生理指標の反応を比較し,以下の特徴を見いだした. Tilting負荷で,収縮期,拡張期血圧ともに高血圧群で午前3時の測定で,baselineに比べ,20°,60°,90°での低下がみられた.また午前9時でもややこの傾向はみられたが,午後9時ではみられなかった.これに対し,正常血圧群では顕著な低下傾向をみとめなかった.Stroke volumeの低下率は高血圧群の午前3時,午前9時で大きかった.正常血圧群でも,午前9時,午前3時の低下がみられたが,午後9時では低下はみられなかった.R-R間隔は,Tilting時に短縮を示したが,午後9時の変化が最も大きく,次いで午前9時,午前3時の順となった.カテコラミンは,いずれも上昇を示したが,反応性の測定時刻による差異は明確ではなかった. 以上より,Tilting時の高血圧群での深夜の血圧低下には,Stroke volume(減少)とR-R間隔(短縮)の反応性が関与している可能性が示唆された.暗算,cold face test時の反応性の測定時刻間,血圧群間の差異については,一定の傾向をみとめなかった. 対象者がなお少数例であり,正常血圧群に比し,高血圧群では平均年齢が若干高いことなども考慮し,対象例数をさらに増やして検討を加える予定である.
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