わが国では加湿器として超音波式のものが広く使用されているが、その微生物汚染が原因で加湿器肺・加湿器熱と名付けられるアレルギ-性肺疾患の生ずることが知られている。筆者は、その汚染防止対策として“WashーOut法"を考案したが、これは加湿器の振動子水槽の容量を小さくなることによって、水タンク水による水槽水の希釈速度を汚染微生物の増殖速度より速くして、汚染を防止しようとするものである。本研究は、このアイデアに基づいて加湿器を試作し、その汚染防止効果を検証することを目的としている。 まず、WashーOut法のアイデア生物化学工業における微生物の連続培養理論に基づいて数学的に解析し、必要な水槽の容量を計算した。そして、その条件に合致する小さな容量をもつ加湿器を試作した。また、水槽水の容量を小さくするだけでは、加湿器の運転中はwashーout効果によって汚染を防止できても、停止中には汚染菌の増殖する可能性があるので、加湿器の停止中には振動子水槽に貯水しないように工夫した。この加湿器を1日8時間、6週間にわたって運転し、水槽水中の生菌数をコロニ-検出率の高い低栄養培地を用いて調べた結果、実験期間を通して生菌は殆ど検出されなかった(市販の加湿器により対照実験では第2週目で10^5CFU/mlのレベルに達した)。また、初発菌数3.3×10^5CGU/mlで負荷試験を行ったところ、加湿器の運転に伴って生菌数は減少し、停止時の8時間目には70CFU/mlとなった。停止中にはこの残りの水槽水は除去されたので、翌日以降は生菌数は殆ど検出されなくなった。以上の結果より、超音波加湿器の微生物汚染防止対策としてwashーout法の有効性が実証された。本法は安全性に全く問題がないものであり、機構的にもコスト的にも十分実用化されうるものと確信する。またこの理論は、他の生態系における微生物制御にも応用できるものである。
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