アスベストの代替物としてはグラスファイバ-、セラミックファイバ-等の人造鉱物繊維があるが、動物実験でこれらの中にはアスベストと同等の発がん性を持つものがある。そこで今日わが国で用いられている人造鉱物繊維が発がん性を持つ可能性を検討するため、以下の実験を行った。1.サンプル調整法の開発:一定のサイズ範囲の人造鉱物繊維のサンプルの調整法を開発した。すなわち沈降法を基本に、鉱物繊維の磨砕時間、沈降の際の水柱の高さ、繊維の凝集に対する対処法、沈降を妨げる気泡の処理、収率を上げるための沈澱物の再利用法等を検討した。2.物理化学的分析:上記サンプルをミリポアフィルタ-上に集め、透過型および走査型電子顕微鏡によりそのサイズを調べた。また組成について原子吸光を用いて元素分析を行った。3.活性酸素産生能:ヒト末梢血より多核白血球を分離し、その浮遊液と人造鉱物繊維やアスベストを反応させ、産生される活性酸素量をルミノ-ル依存化学発光を指標として測定した。化学発光量の測定は6検体同時測定ルミノメタ-を用いた。以上の方法により鉱物繊維のサイズと化学発光産生能の関係を調べると、繊維としての形をとどめなくなるまで磨砕した試料の活性は低く、また一定程度の磨砕である範囲のサイズの繊維が多いとき最もその活性が高まった。これは動物実験で示された繊維のサイズが発がん性に関与するという考え方が、活性酸素の産生においても成立する事を示している。4.そのほかの研究:このほか、産生される活性酸素の核種をカタラ-ゼ、SODなどの抗酸化剤を用いて調べたところ、ス-パ-オキサイド、過酸化水素、ハイドロキシラジカルが関与していることが明らかになった。またタバコとアスベストの同時処理により、相乗作用が観察され、疫学的に報告されている相乗作用を研究する実験モデルとして今後、化学発光の方法を用いうる可能性が示された。
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