近年、気管支ぜん息やアレルギ-性鼻炎などのアレルギ-性鼻炎が増加しており、その原因として室内塵中ダニの増加が考えられている。従来、室内塵中ダニ数の測定は、複雑な前処理後、顕微鏡下でカウントしてきたが、多量の検体を処理するには多くの労力と時間および習練を必要とする。ダニの生体および生体産物にはグアニンが多く含まれる。そこでもし室内塵中のグアニン量がダニ数と関連するのであれば、グアニン量をもって、ダニ数を代表させうる可能性がある。本年度は室内塵中グアニンの定量法およびダニ数との関連について基礎的検討を行なった。グアニンの定量法には液体クロマトグラフィ-を用い、カラムはゲルカラム(日立No.3013N、4mm径×150mm)を使用した。溶離液はA:0.5N酢酸アンモニウム溶液、B:0.1Mリン酸二水素カリウム溶液に0.2%リン酸を添加したもの2種類とした。カラム流量は0.5ml/分、カラムオ-ブン温度63℃、254mmで検出した。溶離液の割合はA:B=1:1である。室内塵からのグアニン含有物質の抽出にはメタノ-ル:水=1:5(V/V)に1.28gのNaOH(1l当り)を添加して用いた。市販のグアニン・アデニン・ウラシルの混合液を分析した結果、分離は完全になされ、グアニンのretention timeは6.5分であり、回収率は95%、再現性は98.5%であった。一般家庭14世帯の室内塵を収集し、従来の顕微鏡下でのダニ数のカウント数とグアニン量の相関係数を求めたところ、総ダニ数とグアニン量のγ=0.703、室内塵中ダニの優占種であるチリダニ数とはr=0.658(いずれもP<0.01)を示し、グアニン量をもって室内塵中のダニ数を代表しうる可能性を明らかにした。なお室内塵中グアニン定量の攪乱因子となる髪の毛、爪の切れ端、食べこぼす可能性のあるたらこ、いくら、ししゃもの卵中のグアニン量は、ダニ由来のグアニン量の0.05〜0.1%であり、問題のないことを確認した。
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