昨年度までに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による室内塵中グアニン量の定量法を確立、予備調査を実施した。本年度はこれらの成果をふまえ、ぜん息患者家庭32世帯と一般家庭123世帯の室内塵中ダニ数(MBA法)、グアニン量、室内塵中ダニアレルゲン量(ELISA法を原理とするダストチェッカー)を測定した。その結果、ぜん息患者家庭、一般家庭共に住宅構造の気密性が増加するにつれ、すなわち木造木枠窓住宅<木造モルタル・アルミサッシ窓<鉄筋・鉄骨住宅の順にダニ数、グアニン量、アレルゲン量が増加した。また居間の床素材については板張りフローリング<畳<じゅうたんの順に各項目共に値が増加し、各群間に有意差が認められた。ぜん息患者家庭と一般家庭の比較では各項目共、一般家庭の平均値が高かった。これは患者家庭の掃除回数が頻回であったためである。ダニ数とグアニン量(I)、ダニ数とアレルゲン量(II)、グアニン量とアレルゲン量(III)のぜん息患者家庭での相関係数は(I)0.694、(II)0.725、(III)0.713、一般家庭では(I)0.625、(II)0.665、(III)0.701を示した。グアニン量又はアレルゲン量を従属変数とし、居間床素材、住宅構造、建築年数、喫煙の有無、室内でのペット飼育の有無を独立変数として、数量化I類による多変量解析を行った結果、ぜん息患者家庭でグアニン量R^2=0.681、偏回帰係数は居間の床素材0.708、建築年数0.621を示し、アレルゲン量はR^2=0.693、偏回帰係数、床素材0.625、建築年数0.553を示した。以上のことから、室内塵中グアニン量の測定により、室内塵中のダニ数やアレルゲン量の推定が可能であることが示唆され、従来のダニ数測定のような煩雑な前処理後、実体顕微鏡下でダニをカウントする代りに、HPLCによる室内塵中グアニン量の測定により、室内塵中のダニアレルゲン量を予測しえることが示唆された。
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