研究課題/領域番号 |
02670255
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研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
藤倉 隆 富山医科薬科大学, 医学部, 講師 (60008323)
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研究分担者 |
畑 伸秀 富山医科薬科大学, 医学部, 教務職員 (40208509)
小湊 慶彦 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (30205512)
滝沢 久夫 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (90171579)
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キーワード | 法医学 / 中枢神経系 / 損傷 / 血管造影法 / 出血 / X線撮影 / 血管破綻 |
研究概要 |
法医学の領域では、外力による脳の損傷を内因性疾患による脳病変と区別し、その成立ちを外因との関連において考えながら的確に鑑定していくことが要求される。しかし、脳の損傷は、それらが立体的な広がりを示すばかりでなく、脳の複数の部位に特有な変化を生ずるために表面からの観察や臓器の薄片による検討によってもなお十分には全体像を把握しがたい。これらの問題を解決するために、従来行われていた脳の肉眼的・組織学的観察に加えて、剖検例の開頭前に総頸動脈から硫酸バリウムを主剤とする造影剤を注入して血管造影を行う方法をとった。その結果、外表の観察により、これまでは見落としがちであった頭皮の微細な損傷も容易に発見することができる。また開頭前の頭部X線撮影により、臨床検査と同様に出血部及び虚血部を同定し、その部分の病変の広がりとその程度を推定することが可能となった。取り出された脳については、外表及び割面を観察し、カラ-写真撮影とX線写真の撮影を行い損傷部位を同定してその広がりを確かめ、その領域の組織標本を作って組織学的に損傷の構築を検討した。造影剤は動脈から毛細血管に至る領域をみたしており、静脈には入っていない。このことは動脈から毛細血管に至る血管の破綻はその破綻部に造影剤が漏出し、静脈系の出血では造影剤の漏出を伴わないことが示された。即ち動脈系の出血を明確に鑑別できる。また、血管破綻部から出血した血液は周辺に向かって広がってしまうので通常の肉眼所見において血管破綻部を特定することは不可能に近いが本法では血管破綻部から造影剤の漏出を見るので破綻部を見いだすことが容易である。このように正常の血圧変動域の圧力で総頸動脈から造影剤を注入し血管造影を行うと、脳損傷の検索に有用なデ-タをうることができる。私たちは本法が脳損傷の研究に新しい道を開いてくれると考え、更に検討を進めている。
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