本年度は心筋線維の病理組織学的変化について、法医剖検例のうち、外傷性ショック死の7例、薬物ショック死の3例を中心として、HE染色、特殊染色であるPTAH染色およびLFB染色に加えて、ABC法によるミオグロビンの免疫組織化学染色等の検査を行って検討した。すなわち、上記4染色法によって心筋線維に認められる光学顕微鏡上の変化を、diffuseな変化の認められるもの(Type A)、contraction bandsの認められるもの(Type B)、AとBとが混在するもの(Type C)との3型に大別すると、外傷性ショック死7例のうち、Type Aが1、Type Bがに、Type Cが3例であり(変化の認められないもの1例)、薬物ショック死3例ではいずれもType Aであった。検討した10例のショック死は受傷時ないしは薬物作用後の生存時間がいずれも短時間から高々10数時間までであり、薬物ショックではcontraction bandsの出現を認めていないことは、例数は少ないが、外傷性ショックの態様とは異なって機序を窺わせ、また外傷性ショックではTypeB、Cあわせて7例中5例(約70%)にContraction bandsを認めていることから、前年度に検討した肺における多形核球の出現、副賢における皮質の壤死とともに、受傷ないしは発症後比較的早期に認められる注目される所見と考えられる。
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