研究概要 |
昨年度の成果を踏まえ,脳内および血中において過剰なβーエンドルフィン(βーEP)が存在した場合の呼吸・循環動態への影響について検討した.βーEPの脳室内投与において雄ラットでは呼吸・循環機能の各パラメ-タにおいて対照とは著しく異なった変化がみられた.すなわちβーEP投与後60分間に呼吸数は投与前に比べ有意に低下し,呼気CO_2は有意に増加した.さらに心拍数と血圧は共に有意に低下した.特に呼吸機能にβーEP投与の影響が顕著に現われた.このような呼吸・循環動態の変化がβーEPによるものかどうかを確認すべく雄ラットにナロキソンをβーEP投与前および投与後30分ないし60分に静注したところ,いずれのパラメ-タにおいても急速な正常復帰傾向がみられた.ただ今回の投与量では短時間で一時的にしか現われなかったが,ナロキソンによって呼吸・循環機能に対するβーEP作用が抑制されることを充分意味した.次に雌ラットを対象に雄と同量のβーEPを脳室内投与したところ,性周期のうち雌性ホルモンの変化が極端な発情期と発情間期のいずれにおいても各パラメ-タで雄と同様な変化が顕著に認められた.従って両機能に対するβーEP作用と性周期の間には関連性は認められなかった.また雌にみられるβーEP投与の影響は呼気CO_2を除いて雄よりも著しく強かった.雌でも呼吸機能への影響の方が大であった.雄では本投与量では殆ど死亡しなかったが,雌では発情期や発情間期に係わらず,その殆どが1時間半以内に呼吸不全で死亡し,本投与量は雌にとって致死量に相当するほどの過剰量であった.βーEPの静注投与においても脳室内投与と同様に雄ラットでは呼吸・循環動態に著しい変化がみられた.βーEPの呼吸・循環動態に及ぼす影響に関して、その雌雄差の原因を特に雄性ホルモンの存在に求めており,現在検討中である.併せて,βーEPの静注投与の影響も性差を中心に追究する予定である.
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