研究概要 |
腎メサンギウム細胞はAVPやAII投与により収縮する。この際に細胞膜のCa^<2+>ーactivated Cl^ーチャンネルが開き、膜は脱分極する。AVPやAIIによって活性化される他のイオンチャンネルを検索するためにパッチクランプのcellーattach法を用いた単一チャンネル電流の計測を行った。AVP,AII投与前には殆んどのパッチにイオンチャンネルはみられなかったが、約15%のパッチに25pSのイオンチャンネルが同定された。反転電位は膜電位で約0mVであり、それよりも過分極側で内向き、脱分極側で外向きになる電流であった。このチャンネルは外液のNa^+イオンとK^+イオンの双方に透過性があり、非選択性陽イオンチャンネルと結論された。AVPやAII投与後、細胞の収縮とともにこのイオンチャンネルの開口確率が増加した。またホルモン投与後に別のイオンチャンネルが記録された。このチャンネル電流は約40pSのコンダクタンスを持ち,反転電位は約ー80mVであった。この電位はネルンストの式から期待されるK^+イオンの平衡電位と一致し,40pSのチャンネルはK^+チャンネルであると結論された。Excisedパッチ法を用いて、細胞質側のCa^<2+>濃度を1μMに上昇させると,25pS,40pSの2つのチャンネルの開口確率は増加し,Ca^<2+>濃度を10^<ー8>に低下させると両方のチャンネルの開口が抑制された。このことから,25pS,40pSのチャンネルともその活性化には細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が必要であることが判明し,25pSのチャンネルはCa^<2+>ーactivated nonーselective cationチャンネル,40pSのチャンネルはCa^<2+>ーactivated K^+チャンネルであると結論された。AVPやAIIによる細胞収縮の際には細胞内プ-ルからCa^<2+>が動員されて細胞内Ca^<2+>濃度が上昇することが知られており,25pS,40pSのチャンネルはこの細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を介して活性化されると考えられた。
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