研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)の原因は不明であるが,本年度の研究では過去2年間の我々の研究で明らかになった2つの遺伝因子,C4AQOとHLA-DRβ1鎖上のQRRAA配列の病因的意義について検討を加えた。C4AQ0遺伝子の解析では,RFLPによる多型の検討により,日本人RAでは白人型の欠損型は極めて稀である事がわかった。又C4AQOは、DR3と相関せず、(DR3が極めて稀なためであろう)、他のDRタイプとの相関も示さなかった。C4AQOのスクリーニングをPSS,SLEなどの自己免疫疾患に拡げたが,これらの疾患でもC4AQOの増加傾向は認められたが,白人型の欠損型はなく,特定のDRとの強い相関もなかった。患者をC4AQO,QRRAAの有無でサブグループに分け臨床所見を比較したが,群間に差がなく,RA発症後はこれらの遺伝因子は病気の進行にあまり影響していないのであろうと考えられる。しかし林の数量化II類による判別分析では群間に差を認め,今後さらに検討すべき事項と思われる。前年度のシークエンスサーチの結果から,アデノウイルスV型の抗体価を螢光抗体法で検討したが、RAと正常間で差はみられなかった。患者血清中のQRRAAに対する抗体価は,EBV抗体価とは有意な相関を認めず,又この抗体は関節液中にも存在し,OAにくらべて高値を示した。両疾患とも関節液中の抗体価は血清抗体価と相関した。韓国RAサンプルの検討では,DR4,DR9の増加を認めたが,DR1,C4AQOの有意な増加は認めなかった。エピトープの検討からは,QRRAAの他,QKRAAが関与していると考えられる。また,DW15は,日本及び周辺の国々の共通疾患感受性因子と考えられる。本研究を通じRAの遺伝要因が民族差を含め一部明らかとなったが,発症機構との関連,ウィルス他の環境因子との関連など,今後さらに研究を進めていく分野と考えられる。
|