1.ヒト肥満細胞の生化学的、機能的解析を目標に、ヒト肥満細胞に発癌遺伝子を導入し、その不死化、細胞株樹立について検討した。 2.発癌遺伝子としては、精製したcーmyc、vーfes、cーrasの混合物、SV40 T antigenおよびψ2細胞(temperature sensitive SV40 T antigenを組み込んだplasーmidの産生細胞株)の培養上清を用いた。 3.肥満細胞の分離:慢性副鼻腔炎患者の鼻粘膜、鼻ポリ-プをハザミで細切し、collagenase、hyaluronidaseで酵素処理し、nylon meshを通して、分離細胞を集めた。大多数の実験ではさらにpercoll分離法、抗ヒトlgE抗体結合DINA beadsによって肥満細胞を濃縮した。 4.発癌遺伝子の導入:以下の3法によって数回ずつ遺伝子の導入を行った。(1)濃縮肥満細胞を3TS繊維芽細胞と混合培養し、肥満細胞が繊維芽細胞と接着した2日後に遺伝子混合物あるいはSV40 T antigenをmicroーinjection。(2)接着した肥満細胞を遺伝子混合物あるいはSV40 T antigenそして8μg/ml polybreneとともに6時間培養し10ー20%DMSOで4分間刺激。(3)分離鼻粘膜細胞、濃縮肥満細胞を50%のψ2細胞培養上清、1ー4μg/ml polybreneと共に2ー4時間incubationし、洗浄後、液体培養、3T3との混合培養、agar上のinterphase cultureを行った。いずれの場合も導入最中、導入後は培養液中に100ー500U/ml interleukinー3(ILー3)、500U/mlILー4、10%3T3培養上清を加えて培養した。 5.培養液は2ー4日毎に半量交換し、肥満細胞はtoluidinーblue染色で検出した。 6.結果:上記(3)の混合培養法で3ヵ月、(3)の液体培養法で1ヵ月余り肥満細胞を維持できたが、現在の所細胞株の樹立には至っていない。細胞株の樹立には静止期の細胞ではなく、それ自身に増殖力のある肥満細胞腫細胞等を用いる必要があると考えられ、手配中である。
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