自己免疫疾患患者に特徴的な自己抗体について、その産生機序を探るため、標的抗原である自己抗原上のエピト-プの認識のされ方の検討を行った。その主要目的は、我々がエピト-プ・プログレッションと名付けた現象すなわち、最初にユニバ-サル・エピト-プから認識が始まり、さらにこれが拡大されてマイナ-・エピト-プが認識されていくという現象が普遍的か否かを調べることである。この為に、なるべく多くの自己抗原遺伝子を用いてエピト-プの分析を試みた。現在までに行ったものは、U1snRNPの68K、A、C蛋白、U2snRNP・B"蛋白、SSーB/La、Sm抗原、Sclー70抗原である。これらについて、大腸菌でのリコンビント自己抗原の発現、削除変異株、エピト-プ発現変異株の作成などを通して、エピト-プに分析を行った。 この結果、これらの分子には90%以上の患者が認識するユニバ-サル・エピト-プが存在することが認識された。また、これらのユニバ-サル・エピト-プだけを認識する患者血清が存在する一方、他の血清はこのエピト-プとの反応に加えて、他のマイナ-・エピト-プとも反応することが判明した。さらに現在調べ得た限りでは3人の症例で、経時的に採取した血清でユニバ-サル・エピト-プの反応から始まってマイナ-・エピト-プをも認識していくというエピト-プの拡大現象が観察された。 またユニバ-サル・エピト-プのアミノ酸配列の分析では、SSーB/La蛋白でネコ肉腫ウィルスと、U1snRNP・C蛋白では単純ヘルペスウィルスとの相同性があることが判明し、ウィルス感染とそれに対する抗体の交差反応から自己抗原の認識が開始され、次第に自己抗原自体が免疫原となり、自己寛容が破られていくという可能性が示唆された。
|