研究概要 |
基礎的検討.1虚血性急性腎不全において血漿エンドセリン濃度および腎組織中のエンドセリン含有量が増加していることが昨年度の成績より明らかになったので腎のどの部位にエンドセリン産生が生じているかについて検討した。まず正常腎において皮質と髄質に分けてエンドセリンの産生の可能性について検討した。家兎およびラットの尿細管浮遊液を作製し,エンドセリンの産生をみた。皮質尿細管浮遊液においては,エンドセリンの産生は認められなかったが,髄質尿細管浮遊液においては,胎児ウシ血清の存在下において,6時間,12時間,15時間と時間依存性にエンドセリン産生量が増加し,髄質尿細管でのエンドセリン産生の可能性が示された。さらに病的な状態でエンドセリン産生が刺激されるが否かについての検討の一つとして,組織の哭症や障害時に出現すると考えられるTGFーβの影響について検討した。TGFーβの存在下において髄管尿細管浮遊液からのエンドセリン産生量をみるとTGFーβにより増加していることがわかった。従って急性腎不全のような状態で細胞障害によりエンドセリン産生が腎髄質で増強しうる可能性も示唆された。2.増加したエンドセリンが水・電解質調節にどのような効果をもたらすかについて今年度は,弥質集合尿細管について検討した。皮質集合尿細管は,Na再吸収をするうえで重要な尿細管であるが,エンドセリンはこの部位で,水・Naの再吸収で抑制している可能性が示唆された。これらのことより,エンドセリンは,急性腎不全時に増加し,血管系への収縮作用とともに,GFRの低下により体液が貯留した状態を緩衝すべく尿細管にNa利尿的に作用している可能性が示唆された。
|