我々は、主に培養メサンギウム細胞(MC)が産生する細胞外基質である基底膜成分の動態、さらに細胞ー基質間あるいは細胞ー細胞間の相互の作用について研究してきた。プラスチック上で培養したMCが産生するGlycosaminoglycan(GAG)の定量、分析、特にTGFーβがMCのGAG産生を促進することについて、Clin.Exp.Immunol.に発表した。さらに、細胞株HRー9が産生した基底膜様物質上で培養したMCは、プラスチック上と比べて多量のGAGを産生することを明らかにし、また、そのMCに電顕的観察により細胞骨格の変化をみとめ、基質の存在がMCの形態、機能に影響を及ぼすことを、第11国際腎学会で発表した。さらに、病的状態における細胞ー基質間相互作用を検討するため、糖尿病状態に近似した糖化基質上でMCを培養したところ、GAGの産生が亢進することを確認した。現在、このような状態での、MCにおける各種基底膜成分(IV型collagen、lamininなど)のmRNAの発現を、Northern blot法を用いて解析中である。また、糖尿病発症ラット(WBN/KoB)の血清中に、MCの増殖を促進する因子が存在することを、第33回日本糖尿病学会で誌上発表したが、さらに、この因子がMCの基質産生にも作用するか検討中である。病的状態における基質成分の異常は、アルポ-ト症候群や基底膜菲薄症候群におけるIV型collagen遺伝子の解析を足がかりとして、DNAレベルからも検討中であり、第23回米国腎学会で成果を発表した。細胞ー基質間相互作用において重要な役割を演ずると考えられる、MCの基質に対するreceptor(integrin)の発現も、現在、そのcDNAプロ-ブや抗体を準備し、検討を進めている。細胞ー細胞間相互作用については、直接接触により、内皮細胞がMCの増殖に影響を及ぼすことを明らかにし、第23回米国腎学会で発表し、論文を投稿中である。
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