研究概要 |
コレステロ-ル逆転送系は末梢組織より肝へコレステロ-ル(C)を運び代謝する機構であり、動脈硬化の進展、退縮に重要な役割りが考えられている。1980年、我々が最初に報告した家族性コレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症に著しい高HDL血症が認められたことより、CETPのHDL代謝への大きな影響が認識されている。これまでの研究により明らかにされたCETP遺伝子における点変異によりヘテロ接合体を診断し、ヘテロ接合体を含めたCETPとリポ蛋白異常との関係を明らかにした。 HDLーC100mg/dl以上の症例を含む血縁のない11家系を対象に、抗CETP抗体(TP2)を用いた、RIA法でのCETP量の測定と、polymerase chain reaction(PCR)ダイレクトシ-クエンス法で、発端症例SYで明らかにされたCETP遺伝子のexon14とintron14の間のsplice donor siteのGよりAへの点変異の有無を検討した。 結果は11家系のうち、5家系はCETPの欠損を示した。CETP欠損の5家系の10例はすべて、G→A変異のホモ接合体であった。CETPのリポ蛋白代謝におよぼす影響をCETP欠損5家系のホモ10例、ヘテロ20例で検討した。CETPを欠損したホモ接合体は、TC271±32mg/dl,HDLーC164±39,LDLーC77±31土と高HDLー,低LDLーC血症を認めた。ヘテロ接合体では、CETPは政常者の約半分の値を示し、TC195±44,HDLーC66±15,LDLーC111±43と軽度高HDLーC血症を認め、特徴的にHDL2/HDL3比が約2倍に増加していた。以上より、CETPはHDL2値を決定する重要な因子であることが示唆された。また、CETP値とLDLーCとは正相関が認められ、また、リポ蛋白脂質組成にも影響していた。 これらの結果から、CETP欠損による高HDL血症のリポ蛋白組合はヘテロ接合体においても抗動脈硬化性であることが示唆され、さらに、CETP欠損が動脈硬化の進展を抑制している可能性の検討が必要と思われる。
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