研究概要 |
CD34+CD7+で9q-の染色体異常を示す幹細胞白血病細胞は、形態学的に極めて特異で、ChediakーHigashi病にみられる白血球の顆粒様の巨大なペルオキシダ-ゼ陽性顆粒を白血病細胞の胞体内に持つ(Akashi et al.Brit J Haematol in press)。表面形質ではCD34,CD7の他に骨髄系にcommitした細胞のマ-カ-CD33とT細胞系細胞のマ-カ-であるCD2も持っている事を明らかにした。またCD7とCD2陽性にもかかわらずT細胞受容体遺伝子、免疫グロブリン遺伝子の再構成はみられないことから、幹細胞白血病細胞の癌化のレベルは極めて未熟な造血幹細胞であろうと推測された。この幹細胞白血病細胞の各種サイトカインに対する反応性を検討することで、正常造血幹細胞のサイトカインへの反応性を推測できると考えそれを調べた。検討したサイトカインのうちILー3が最も強い幹細胞白血病細胞増殖刺激効果をもち、さらに興味深いことには、一般には骨髓性細胞の増殖抑制ILー4がこの細胞の増殖を刺激した。またILー6と赤芽球系細胞の増殖刺激因子であるエリスロポエチンが、ILー3またはILー4の存在下で相乗的に働く事を報告した(Akashi et al.Blood 1991)。このことは造血幹細胞動態のコントロ-ルが複数のサイトカインで複雑に調節されている事を示唆し興味深い。 この研究の過程で、同じく骨髄造血幹細胞に由来する腫瘍と考えられている慢性骨髄単球性白血病(CMMoL)でILー6とGMーCSFがautocrine増殖に関与することを明らかにし、このことを発表したが(Akashi et al.J.Clin.Invest 1991)。この内の一例よりCMMoL由来の白血病細胞株を樹立した(Shibuya et al.in preparation)。この細胞は表面抗原として幼弱顆球系のマ-カ-CD33とHLAーDRが陽性で、TPA,ILー4,γーIFNでマクロ-ファ-ジに分化することを認めた。この際分化した細胞はCD13,CD14の陽性率がきわめて高くなった。
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