研究概要 |
I HTLVーIが血管内皮細胞や滑膜細胞に感染するのか? 関節炎患者より得た滑膜細胞をHTLVーI感染T細胞株であるMTー2やHCTー1と混合培養を行うと、滑膜細胞の ^3HーチミジンのDNAへの取込みが増加し、細胞数の増加もみられた。この滑膜細胞の増殖は細胞同志の接着が必要であった。混合培養した滑膜細胞をgag蛋白に対するGIN14抗体で染色すると、一部の滑膜細胞は染色され、HTLVーIの感染が示唆された。混合培養した滑膜細胞の培養上清にはGMーCSFが多量に検出され、GINー14陽性細胞にのみGMーCSFの産生が認められた。以上より、抗HTLVーI抗体陽性関節炎の滑膜細胞増殖の機序として滑膜細胞へのHTLVーI感染によるGMーCSFの産生が関与していることが示唆された。 II HTLVーI pX遺伝子を単核球細胞に導入し、どのような遺伝子転写活性を生じているのか? HTLVーI pX発現プラスミドをDEAEデキストラン法/高張液処理にてU932(ヒト単核球細胞)に導入した。導入細胞においてノザン法でpX遺伝子mRNA、ウェスタン法でp40^<tax>の発現を確認した。MT2ではILー2RαのmRNAの発現があるが導入細胞においてはILー2Rαの発現は見られなかった。pX遺伝子の発現に伴い、分化した単核球細胞に特異的に発現するtyrosine kinase activityをもつプロト癌遺伝子cーfgr mRNA、p58^<cーfgr>の発現が認められた。この事実より単核球細胞におけるpX遺伝子による転写活性化はT細胞と異なっていることが示唆された。 III 抗HTLVーI抗体陽性関節炎患者の抗HTLVーI抗体の抗原認識部位について。 HTLVーI envelope蛋白中immunodominant siteをコンピュ-タ-・アルゴリズムで推定し、ペプタイドを7種類合成した。抗HTLVーI抗体陽性関節炎患者血清はE1,E2,E8に反応した。HAMやATL血清もE1,E2,E8に反応し、HAM患者血清のみE9にも反応した。
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