1.ヒト末梢血T細胞の血管外遊走をin vitroで測定する実験系を確立した。ヒト臍帶静脈由来の血管内皮細胞をコラ-ゲンゲル表面に単層培養し、末梢血T細胞分画を添加してさらに4時間培養した後、血管内皮細胞に接着したT細胞、コラ-ゲンゲル内に遊走したT細胞を回収した。接着T細胞は全添加T細胞の14%、遊走T細胞は全添加T細胞の1.5%であり、血管内皮細胞へのT細胞の接着および血管外遊走に選択性があることを示唆した。 2.末梢血T細胞および接着T細胞のILー2レセプタ-発現は5%以下であったが、遊走T細胞のILー2レセプタ-発現は増強しており、発現率は22%であった。 3.細胞外のマトリックスに対するレセプタ-であるVLA2、VLA3の発現率は末梢血未刺激T細胞はそれぞれ平均3%、6.8%と低いが、遊走T細胞の約半数にVLA2、VLA3発現がみられた。VLA発現増強には抗原刺激後数週間を要するとされ、in vitro培養中の数時間で遊走T細胞にVLA2、VLA3の発現が誘導されたとは考え難く、生体内で既に刺激を受けて活性化されたT細胞が選択的に血管外へ遊走する可能性が示唆された。 4.CD26はコラ-ゲンに対するレセプタ-で、T細胞の活性化により発現が増強する。CD26の発現も遊走T細胞で増強していた。 5.遊走T細胞の60〜85%はCD4^+CD29^+CD45RO^+のメモリ-インデュ-サ-T細胞タイプの表面形質を示した。これは、自己免疫疾患の初期病変で血管周囲に集積するT細胞の表面マ-カ-の特徴と一致していた。 6.代表的な接着分子であるLFAー1およびVLAに対するモノクロ-ナル抗体を用いた阻止実験では、抗LFAー1抗体でT細胞を前処理するとT細胞の血管内皮細胞への接着および遊走を阻止した。抗VLAβ1抗体の前処理では、T細胞の接着を増強したが、遊走は阻止した。 以上の実験からT細胞の内皮細胞への接着および遊走には選択性があり、接着分子が関与することが示された。
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