血管内皮細胞に接着し、さらに血管内皮細胞下へ遊走する末梢血T細胞をin vitro培養系を用いて解析し、平成2年度ではモノクロ-ナル抗体を用いた細胞表面マ-カ-の検討により遊走T細胞はCD4^+CD29^+CD45RO^+のメモリ-インデュ-サ-T細胞タイプの表面形質を持つことを示した。 平成3年度は、血管内皮細胞下へ遊走するT細胞、血管内皮細胞に接着するが遊走しない細胞、および末梢血T細胞の3群の細胞活性化状態を異なる3つの方法を用いて検討した。 1)活性化関連細胞表面分子を認識するモノクロ-ナル抗体を用いたフロ-サイトメトリ-で検出し、活性化表面分子であるCD25(ILー2R)は遊走T細胞22±9%で陽性を示したのに対し、他の2群では5%以下であった。CD26(コラ-ゲンレセプタ-)は最も強く発現したT細胞のみが遊走した。 2)各群T細胞の ^3HーTdRおよび ^3HーUdRの取り込みからDNA合成およびRNA合成を測定し、DNA合成は3群の間に有意差は見られなかったが、RNA合成では遊走T細胞が他の2群よりも2倍以上高い取り込みを示した。 3)細胞内DNA、RNAを直接染色してフロ-サイトメトリ-で検出し、各群T細胞の細胞周期を検討した結果、遊走T細胞の20〜25%がG_1期にあったが、他の2群ではG_1期の細胞は5%以下であった。 以上の成績から、末梢血中の遊走能力を持ったT細胞は既に生体内でG_1期まで活性化されていることが示唆された。
|